中小企業庁 東京都よろず支援拠点コーディネーター
㈱ファイブ・スター 代表取締役
中小企業診断士 金綱 潤

1.クラウドが経営の現場に

 企業の事業活動推進には、製造や販売だけでなく、総務、経理等の基幹業務の遂行が必要になります。特に人、モノ、カネ、ノウハウ、情報に制約がある中小企業にとっては、コスト負担や、効率・制度向上の面でAIやITシステムの効果的な運用が期待されています。 
この点に関しては、従来は多くの中小企業では給与系や勘定系分野での市販のソフトウエア利用が一般的でした。いわゆるインストールソフトです。しかしながら近年、その状況に変化が起きています。クラウド上にあるリソースを活用する企業が年々、増加しています。

2.クラウドとは何か?

クラウドとは雲の上にあるコンピューター利用をイメージされる方も多いと思いますが、あくまでもコンピューターの利用形態を指します。インターネットなどのネットワークに接続されたコンピューター(サーバー)が提供するサービスを、利用者はネットワーク経由で手元のパソコンやスマートフォンで使うことを意味します。
従来のコンピューターの利用形態では、利用者は手元のパソコンの中にあるソフトウェアやデータを利用していました。しかしクラウドサービスでは、ネットワークを経由して、雲(クラウド)の中にあるソフトウェアやデータをサービスの形でつかうスタイルです。
意味が分かれば納得ですが、インストール系ソフトウエアへの慣れや機能拡張等もあり普及のスピードは今一つでした。また未だに何となく、データの互換性やセキュリティ、運用面でのネガティブなイメージを持つ方も多いのも実際でした。

3:近年、普及し始めてきたクラウド

しかしながら近年、クラウドを利活用する中小企業さんも増えて来ました。色々な要因が考えられますが、人手不足対応や生産性の向上が叫ばれる中、課題解決のためにクラウドの利活用が身近になってきたことが挙げられます。平成25年の情報通信白書によれば、中小企業の労働生産性(従業員一人当たり年間いくら付加価値を稼ぐか? 付加価値額/従業員数)においては、クラウドの利用企業が474万円に対して非利用企業では435万円に留まっている結果も出ています。

4:クラウドとFintech

一方、金融業界を中心にfinancial technologyの造語であるFintechがクラウドサービスとして普及してきました。金融の基本機能には、決済、融資、会計がありますが、決済のコスト、スピードや融資実行のスピード、帳簿作成の自動化等の面で、ルーティンの業務に比べて圧倒的な優位性が見込めるために、この研究が進んでいます。例えば、ある銀行では、融資先企業とFintechで繋がることで、融資先企業の経営情報をリアルタイムに把握し、タイムリーな経営コンサルティングや資金提供につなげるサービスを試行開始しました。経理担当者のルーティン業務には、発注書、請求書、納品書発行作業や取引と帳票書類の確認作業、記帳業務,振込作業、消込作業、売上債権管理作業、経費精算作業がありますが、クラウド会計ソフトを利活用することで、これ等の作業を簡素化し、重要な予算編成や資金繰り管理、現場とのコミュニケーションにも時間を掛けることで成果を挙げている企業も増えてきました。特定の経理担当者だけが使いこなしてきたインストール系のソフトと違い、安価な月額料金で多くのメンバーが参加出来て、中小企業のバックオフィスを自動化・効率化出来る点にメリットも多いことから、クラウド会計の導入に踏み切る企業も増えて来ました。

5:クラウド導入の課題

しかしながらクラウド導入に関してはいくつかの課題もあります。例えば従来の仕事では営業、販売、納品、請求、債権管理、入金消込、仕訳入力等、別々の人がバラバラの管理フォーマットで行ってきているため、部門間、ユーザー間の互換性が悪く、ユーザー同士がクラウド上で繋がるプラットフォームに繋がりにくいことが挙げられます。
今までのやり方に固執する気持ちや業務への習熟効果を主張し変化を嫌う現実もあります。
しかしながら、お客様への意味ある価値を提供する観点から言うと、新しいパラダイムが普及している現実を次代のチャンスと捉え、チャレンジしたいものです。
ご不明な点やご相談ある方は気軽にお尋ね下さい。

http://five-star.xyz/
ご一読有難うございました。以上